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Lore
キチンのシェル
基礎的な仮定すらも疑うゴースト用。
「女王に民を見捨てる権利などあるのでしょうか」クロウの妹は肩に力を入れたまま、遠くを見つめている。「もしあったとしても、私はとうの昔にその権利を使い果たしました」
クロウはマラと外で移ろう霧を視界に入れたまま、窓台の上で姿勢を変える。
夢見る都市はクロウにとって窮屈な場所だった。ここに来ると、肩の緊張を抜くこともできない。どこかの岩陰からライフルと手錠を持った敵が出て来るのを待っているかのように、体が身構えてしまう。
グリントはここが気に入っている。クロウは掌でゴーストの重さを支えながら、マラに伝えるべき適切な言葉を探した。「自分でいることより、役目を果たすことを優先するのは簡単なことじゃない。だが、ちゃんとした足場にはなるんじゃないか? 自分の立場をしっかり理解できる」
「ここにはもういたくないのです」常に感情をコントロールしているマラらしからぬ不平だ。
「正直言うと、私も気休め程度にしかなっていない」クロウが認める。「自分が役に立っていることはわかっている。自分よりも大きな責任がないと、未開の地に走って行ってしまうんだってことも。未開の地には魅力を感じずにはいられないものでな…」
クロウが親指でグリントのシェルの一面をなぞると、グリントは機嫌の良い猫さながらにクロウの手にすり寄ってきた。「お前と、あるいはお前のために行きたいのは山々だが、私には私の責任がある。それでも… 私は今の自分のことが気に入っている。バンガードのクロウは、流浪者のクロウよりもずっと健全な男だ。それと同じで、女王マラは一番良いお前なんだ。
「そうですね」とマラ。
顎に手をそえて考え込んでいるその姿は、どこか無防備で、何かを守ろうとしているかのようだ。
「すまない。スジュールがお前にとってどれだけ大切な存在なのかは理解、もとい感じている。我々はこうして自分で選んだ檻の開けた扉から出ていくことができないでいるが… もしかすると、それでも答えが見つかるかもしれない」
グリントが窓の外を見ようと、クロウの指にシェルを押し付け始めた。クロウは彼を手放す。
「お前の任務にふさわしい戦士を必ず見つける。ハンターバンガードとして、そしてお前の弟として約束する」
マラは胸の前で静かに片手を握った。