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背教者の刃のヘルム
このナイフをお前にやる。
宿られること、それは屈することを意味する。スロアンの耳には、タイタンの深部で彼女を呪った旋律が今も聞こえていた。宿れ。生きろ。そして、その後ろで、何かが静かにうごめいていた。それはささやかれた申し出だ。そこにはナイフがある…
最後の部分が聞こえ始めたのは最近になってからだった。スロアンは胸騒ぎを覚えた。彼女とアーサの絆は隔離し、守るものだ。力ずくで彼女を支配することはできない。だが、スロアンの意志であれば話は別だ。時間さえあれば、摩滅しない物質など存在しない。メタンであろうと水であろうと、海は岩をも砂に変える。
少しでも後退すれば、完全に敗北することになる。
スロアンはその執拗な申し出を遮断した。彼女は絶対に過ちを犯さない。彼女は自分と宿りの境界線をはっきりと知る必要があった。疑う余地はない。
彼女は瞑想しながらエリスを思った。奈落へと降りていったエリス。変化を遂げて戻ってきたエリス。復讐の神として君臨することができるほどにハイヴとなったエリス。彼女にもそのような境界線があるのだろうか? 彼女もエリス・モーンとハイヴを区別し、そのふたつが絶対に混ざらないようにしているのだろうか?
いや。そんなはずはない。そうであれば、別の誰かが己の血肉からキチンをつくりだすことができる新たなハイヴ神になっていたことだろう。
スロアンは想像した。自分も同じようにしたらどうなる? あの悲痛のナイフを両手に掲げ、スロアンはナイフを持つ者であると同時にナイフそのものでもあると言ったとしたら? 不毛な宿りの炎を帯びた彼女はより鋭くなることができる。
それは同じではなかった。スロアンは心の奥で、骨の髄でそれを確信していた。一度ナイフを拾ってしまえば、彼女はそれを再び置くことができないだろう。エリスとハイヴのようにはいかない。宿られた者は後戻りすることができないのだ。
そうだ、同じであるはずがない。